東京のマモノ


「東京のマモノ」 脚本:小野寺 経亭

一人芝居可能 理想は3人

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台本PDF・小野寺 経亭:daihon_tm

 

主な登場人物

  • わたし(女)
  • わたしの母
  • 通りすがりの男性

一人芝居可能かも。

 

シナリオ

18歳。

高校を卒業してすぐ、東京へ来た。

大学には行かなかった。というか行けるほどの学力がなかった。

ど田舎者は都会の輝きに弱い。

そして東京には中途半端な憧れがあった。

きっかけはいつも些細なことだ。

昔見た少女漫画で

夜の公園で、家出した女の子が

王子様のようにイケメンな男の子に声をかけられるところから始まる

ラブストーリーに心を奪われた。

東京ではこんなドラマチックな出来事が

日常茶飯事で起こっている。

そんな妄想が私の脳内で踊った。

けれど、親も友達も置いて

キャリーバッグひとつで上京した私にとって

6畳のクローゼットのない狭いアパートでの生活は

孤独な日々だった。

しかし慣れとは恐ろしいもので

私はなんとかうまいこと生活した。

バイト先を見つけて働いて

でもお金が手に入っても私が満たされることなんかなくて

むしろ物足りなさは日々少しづつ大きくなっていく。

夜の公園で一人で飲むビールは

夏の暑さを紛らわすには生ぬるくてまずかった。

外灯に群がる蛾。

まったくバカみたい。

そのまぶしく輝いている灯りは作られたモノで、

本当に明るくてまぶしくてキレイなモノはほかにあって

それでも蛾たちはその灯りに群がる。

まるで私の様だった。

公園のベンチでうなだれる私の手の平で携帯が震えた。

田舎のお母さんからの電話だった。

「・・・もしもし」

「もしもし?あんた、先週メールしたんだけど見た?」

「あ・・・見てない」

「やっぱりね、だろうと思ったわ。先週おばあちゃん家に行ったときあんたが元気かどうか電話しろって言われてね。」

「・・・」

「・・・なんかあったの?」

お母さんってすごいな。

なんだかふとそう思った。

思えば、なんだか急にさみしくなったり思い悩んだりしたときに

まるで何でも知っているかのように

向こうから連絡が来る。

何気ない会話でも、そんなことが嬉しかったりする。

一人で暮らして初めて実感したことだった。

「・・・ううん。なんもないよ」

「そう。まあ、いつでも帰って来なさいよ」

「うん。自分で出るって決めたし、もう少し頑張るよ」

電話が切れて、私の気持ちもだいぶ軽くなった。

もう帰ろう。そう歩き出そうとしたとき

視界にビーサンが飛び込んできた。

ふと顔を上げる。

「おねえさん、一人ですか」

昔の少女漫画が頭をよぎる。

憧れの東京に来て初めて、恋に落ちる音を聞いた。

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